松戸市根本のお客様よりお譲りいただいたラテンアメリカ文学関連書籍から、オクタビオ・パス『孤独の迷宮』を紹介します!

 先日、松戸市根本のお客様より、ラテンアメリカ文学、ジャズCD、講談社文芸文庫、講談社学術文庫、ちくま文芸文庫、岩波文庫等、折りたたみコンテナ16箱分ほどの書籍やCDをお譲りいただいたことをお知らせいたしました。

 今回は、その中から、1990年にノーベル文学賞を受賞したことで知られる、メキシコの詩人・批評家・外交官のオクタビオ・パス(Octavio Paz)が著した、『孤独の迷宮―メキシコの文化と歴史―』を取り上げます。同書は1960年に刊行され、日本語訳は1982年に法政大学出版局より刊行されています。

 まずは、訳者の高山智博、熊谷明子両氏による「あとがき」に依って、パスの人となりを紹介します。

 パスは1914年、メキシコ市に生まれました。彼の祖父、父親は革命運動家であり、パス自身も1937年に内戦真っただ中のスペインへ渡ります。きっかけは、「反ファシズム文筆家会議」に出席するためでした。パスはその後、1944年にアメリカに留学し、詩について研究し、さらに翌年にはフランスに赴き、シュールレアリスムの影響を受けました。1946年からはメキシコの外交官としてフランス、インド、スイスに駐在しました。なお、日本には1952年に訪れたことがあります。

 

パス『孤独の迷宮』

 このような国際性豊かな経歴を持つパスが、1960年に刊行したのが、メキシコの文化と歴史を論じた『孤独の迷宮』ということになります。日本人が日本を論じると、とかく礼賛一辺倒、あるいは「日本スゴイ」といった論調になりがちですが、パスのメキシコ論はそのようなものでは断じてないことが、その来歴からもうかがえます。パス自身は、『孤独の迷宮』で目指したものは、「メキシコ的なものの探究」というよりも、それからの解放にあったと述べています。世界の誰とも「同時代人」であると考えようとしたパスは、「メキシコ的なもの」を国境を越えた交わりの中で見極めようとしたのです。それでは、自らの特殊性や優越性を強調するような閉じた枠組みで論じてしまいがちな「自国の文化や歴史」というテーマに、国際人のパスが挑戦したのはなぜでしょうか。それは、彼が次のように考えていたからだと思います。以下、『孤独の迷宮』から引用します。

 「産業社会は――その『思想的』、政治的、ないし経済的相違とは別に――質的な、すなわち人間的な相違を量的な画一性に変えようとする。大量生産の方法が道徳、芸術、そして感情にまでも適用されている。矛盾や例外の排除……こうして、生が人間に与える最も深遠な経験、つまり相反するものが互いに結びつく全体としての現実に入り込むという経験に近づく道を閉ざしてしまう」(法政大学出版局、1982年訳書の215頁)

 1960年という時期は、世界的な経済成長の時代で、大量生産・大量消費の経済・社会のシステムがフル回転していた時代です。これこそ、パスが懸念した「人間的な相違を量的な画一性に変えようとする」圧力を生み出したものといえます。そのような経済・社会のシステムは、現代においては、地球環境を一層破壊しながら、人々の暮らしの持続可能性を奪っています。そのような苦境から脱し、どのように生きていくべきか、と思うとき、パスが試みたように自国の文化や歴史を世界の中で考え、普段の暮らしに潜む問題を根底から見つめなおす、というのが出発点になるのかもしれません。現在の経済・社会のシステムの弊害を政治力で、しかも誰かのトップダウンで解決してもらうことはできません。少なくとも歴史的には、そのような政治指導によってさらなる悲劇が起き続けてきました。私たちが忘れてはならないことは、人々の暮らしぶりが変わって、それが自然と経済・社会のシステムを別の動きに変え、その上で私たちにとって本当に意味のある政治がようやく行われるようになる、という現実を受け入れることではないでしょうか。

 そのような歩みの中で、自国の文化や歴史を世界の中で考え、安易な画一化に陥らず、「相反するものが互いに結びつく」ことで、「全体としての現実に入り込む」ことがどのようにしてできるのか、それを考え続けるため、パスの『孤独の迷宮』をお勧めします!

小野坂


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