専門書・学術書等をお譲りいただきました!~加藤陽子氏『戦争の論理 日露戦争から太平洋戦争まで』を紹介します!

寒さと共に乾燥の気になる冬。手元の湿度計は21%を指しています。
手がかさかさして痛いです😢
私、個人的には湿った世界の方が好きです。そんなコトーが今日のブログを書きます。

先日は、東京都足立区での出張買取がございました。
語学・心理学・法学・歴史学等々の専門書・学術書に加え、戦記などをお譲りいただきました!
また、切手・年賀状・ライター・万年筆・腕時計などもいただいております。

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さて、この度、戦記などをお譲りいただいたということで、戦争に関する書籍をご紹介したいと思います。
加藤陽子氏『戦争の論理 日露戦争から太平洋戦争まで』(勁草書房、2005年6月)です。歴史学 専門書

加藤氏は、1960年のお生まれで、1989年に東京大学大学院の博士課程(国史学)修了されています。現在は東京大学大学院人文社会系研究科の日本文化研究専攻日本史学講座にご所属で、専門は日本近代史です。

加藤氏は、この本で、その時代に生きた人であるならば理解可能なことが、パラダイム変化によって忘却されることがあると述べています(はじめに、ⅳ頁)。「パラダイム変化」とは、日常ではなじみのない言葉かもしれませんが、次のようなことです。規範的な考えや物の見方・捉え方の変化によって、それらが当時では常識であったとしても、現在では全く理解できなくなることがあるわけです。

たしかに、日本近代の戦争についてまことしやかに語られ、語り継がれ、現在私もまた語ることは、語られる過去の出来事の論理や思考からは離れているに違いありません。しかも、そうした当時と現在とのズレを自覚できる機会も想像以上に少ないといえるかもしれません。この問題に対して、日本近代史研究はどのように取り組んできたのでしょうか。

本書をひもとくと、当時の事実を裏づける豊富な史料を用いつつ、その上でどのような理論で物事が進み、その中で人々が何を考えていたのかを検証する加藤氏の筆さばきに接することになります。具体的な事実を史料的な根拠に基づいて示しつつ、かつ単なる事実確認にとどまらず、そこから当時の論理を復元するところにまで達している歴史の本は、どこにでもあるわけではありません。そして何より、加藤氏が導き出した結論は、私たちがぼんやりと戦争について考えていることとは大分異なるのではないでしょうか。

例えば、私は日本の戦争について考える場合、軍部の暴走というイメージを持っていました。
しかし、本書を読んで、それだけですべてを語ることはできないことを知りました。

加藤氏の『戦争の論理』の第一章「軍の論理を考える」を覗いてみましょう。

1931年9月の満州事変勃発について、加藤氏がどのように述べているかみていきましょう。加藤氏はまず、1930年代半ばに広田内閣および平沼内閣の外相であった有田八郎の言葉を参照しています。その有田発言の趣旨は、外国や外地に駐屯していた軍隊がいたから、軍はあそこまでのことができたのだ、というものです。

それを受けて加藤氏は次のように指摘しています。そもそも、一般に派兵決定は、本来は閣議決定の上での首相からの上奏、それと並行した参謀総長からの上奏を必要とするという、慎重な手続きが取られるはずでした。しかしながら満州事変の際には、外国や外地に駐屯していた軍隊があったために、その手続きがゆるがせになっていました(第一章、9-10頁)。

また、加藤氏は、満州事変の際に、閣議で話し合われていることを引用しながら、軍部の独断専行が、閣議で承認されていないことも示しています。そもそも、紛争が勃発しても、増兵の要求には奉勅命令が必要であり、奉勅命令を出すためには閣議決定が必要であったことを考えると、出先での軍の暴走も、内閣の決意如何によっては一時的なもので終わる仕組みとなっていました(第一章、15頁)。

以上のように加藤氏が史料をもとに示した事実をふまえると、結局は軍の行動を許してしまったものの、制度的にはそれを防ぐためのものはあった、ということがわかりました。この事実は、私がぼんやりと信じていた「軍の暴走」の言説では、見えてこなかったことです。この増兵要求をめぐる一件は、「軍の暴走」を防ぎたいなら、必ず知っておかなくてはならないことだといえます。

当時にどのようなことがあったのか、緻密に、論理立てて考えていくこと、その重要性をこの本から感じました。そのような学問的手続きを経て一歩一歩、進むことがなければ、日本近代の戦争についての語りは、イメージが先行するばかりとなるでしょう。

過去は現在に繋がっているのだから、過去にどのようなことがあったのかを知ろうと悪戦苦闘することは、私たちがなすべきことのはずです。副題にある太平洋戦争勃発から80年以上が経過した現在、『戦争の論理』で加藤氏が示した知見は、刊行時以上に重みを増しています。

いつまでも学び続けなければならないという思いをあらたにしました。

 

このブログを書くにあたり、先輩スタッフにご助言をたくさんいただきました。ありがとうございました。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

コト―

 


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