日本郵船株式会社広報グループ編『航跡――日本郵船創業120年周年記念』(日本郵船株式会社、2004年)が入荷しました

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 この投稿を作成しているのは、東京でも降雪のあった2月10日なのですが、そんな中でも商品を配達してくださる配送業者の方々には頭の下がる思いです。そういうわけで今回は、最近入荷した運輸の歴史に関わる書籍を紹介します。以下、ご覧くだされば幸いです。

日本郵船

 上掲の画像は、日本郵船株式会社広報グループ編『航跡――日本郵船創業120年周年記念』(日本郵船株式会社、2004年)です。本書は、日本郵船歴史博物館の展示品、所有品、史料を中心にまとめた図録となっています。目次を確認すると、本書は単なる年代記ではなく、上記の物品、文書に即した配列で構成されていることがわかります。一見して戸惑いを覚えるかもしれませんが、通常の社史とは異なる趣きゆえに、新たな発見もあるかもしれませんし、既知の事実であったとしても、印象が異なってみえるかもしれません。

 したがって、有名なエピソードを扱っていながら、そこに最近の発見が加えられている箇所などは、本書を読む際に注目すべき点になるといえます。そのような記述、写真などが都合よくあるだろうか?とページをめくっているときにみつけたのが、下記の部分になります。

日本郵船

 上掲の頁は、日露戦争時、ロシアのバルチック艦隊を発見し、日本艦隊に「敵艦見ユ」と無線で打電したことで知られる、信濃丸(1900年建造)の項目です。ここでは無線の話に加えて、信濃丸の号鐘(時刻や船舶の位置を伝えるための鐘)が、新たにとある教会で発見されたことが取り上げられています。バルチック艦隊の到来を告げた船の号鐘が、芝公園の聖アンデレ教会(東京都)の鐘となっていたことは意外ですが、その経緯はよくわからないようです。

 過去の出来事が完全にはわからないのと同様に、私たちの未来の見通しも完全なものではあり得ません。少なくともこの教会鐘が最後の審判を告げることのないよう、祈るばかりです。

 他にも信濃丸の項目には、中国国民革命の指導者孫文の書が紹介されています。これは、1918年に孫文が日本へ向かう途上のものになります。海運にまつわる本書において、国境を超える人々の交流が取り上げられるのは、必然性のあることだともいえます。日中関係について考えるときは、こうした歴史から目を切ることなく、単なる国家間の関係にとどまらない視点を持たなくてはなりません。

 日露戦争、そして中国国民革命とに意外な形で関わった信濃丸は、東アジアの国際政治史や国際安全保障を考えるうえで、大変興味深い存在です。とくに安全保障とは、軍隊同士の最前線での衝突のみを意味するわけではありません。そのため安全保障を論じるにあたっては、局地的な軍事作戦、そしてそれらを包括する戦略全体を支えるはずの、運輸・通信技術の水準が、その運用ともあわせてどのようなものとなっているか、という問題を無視することはできません。その上で、最大の安全保障は国家を超えた信頼関係である、という鉄則を信濃丸の存在が示しているのではないでしょうか。

 こうした信濃丸をめぐるエピソードは、教会の鐘が最後の審判を告げることのないよう、これまでの戦争の歴史やこれからの安全保障の問題を考える際の切り口のひとつとなり得るのではないでしょうか。

小野坂


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