カール・ポランニー(Karl Polanyi)の著書が入荷しました!~『大転換』から『人間の経済』へ

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 ハンガリー出身の経済学者、文化人類学者のカール・ポランニー(Karl Polanyi, 1886-1964)の著書の翻訳が、最近入荷しました。今回は、ポランニー独自の概念の一端にふれつつ、入荷しました書籍を紹介していきます。

Karl Polanyi

 ポランニーが提唱した概念の一つに、「擬制商品」というものがあります。これは、商品ではないものをあたかも商品であるかのように扱っていることを分析するための概念です。ポランニーは『大転換』で、土地、労働、貨幣は、本来商品ではない、つまり販売を目的に生産されたものではないと述べています。これは興味深い指摘で、私たちの「経済」についての思い込みを打破するきっかけになります。商品についての研究は社会主義思想において非常に重要な地位を占めていて、カール・マルクスは『資本論』を商品の分析から始めているほどです。これに対して、ポランニーは、本来商品でなかったものがあたかも商品のように扱われることを分析することで、独自の領域を開きました(ただ、ポランニーが自負するほどマルクスと異なる議論をしているわけではなく、近年の研究では両者の類似点の方が指摘されています)。

 ともかく、私たちは「土地」の別名である地球環境に大きな負担をかけ、「労働」でさまざまな心配事を抱え、「貨幣」については円安による物価上昇に怯えています。「土地」、「労働」、「貨幣」、いずれもが売り買いの対象となっていることで、上記の問題が引き起こされています。そうした経済について考えるにあたって、ポランニーが遺した文章は大変貴重なのです。

 1944年初版の『大転換』の実際の文章をみてみましょう。その第6章では次のように書かれています。

「市場経済とは、市場によってのみ制御され、規制され、方向づけられる経済システムであり、財の生産と分配の秩序はこの自己調整的なメカニズムにゆだねられる。……自己調整とは、すべての生産が市場での販売のためになされ、すべての所得がそうした販売から生じることを意味する。したがって、産業のすべての要因にとって、つまり、財(つねにサービスを含む)だけでなく、労働、土地、貨幣にとっても市場が存在する。そしてこれらの要因の価格はそれぞれ商品価格、賃金、地代、利子と呼ばれるが、これらの用語はまさしく価格が所得を形成することを示している。すなわち、利子は貨幣の使用に対する価格であって、貨幣を供給できる人々の所得を形成する。地代は土地の使用に対する価格であって、土地を供給する人々の所得を形成する。賃金は労働力の使用に対する価格であって、労働力を売る人々の所得を形成する。最後に、商品価格は企業家としてのサービスを売る人々の所得の一因となる。」

 このようなものが、「擬制商品」とされています。さきほど、ポランニーの「擬制商品」概念は、私たちの「経済」についての思い込みを打破するきっかけになると述べました。というのも、「擬制商品」は自然発生的に生まれるものではないからです。引き続き、『大転換』第6章の引用をみていきましょう。

「さらにもう一群の前提が国家とその政策に関連して出てくる。市場の形成を阻止するものがけっしてあってはならないし、所得は販売以外の方法で形成されてもいけない。さらにまた、市場状態の変化に対する価格の適応――その価格が財の価格であろうと、土地、労働、貨幣の価格であろうと――を妨げるものがあってもいけない。そこで、産業のすべての要因にとって市場がなければならないだけでなく、これらの市場の動きに影響を及ぼす措置や政策がとられてもいけないことになる。価格も需要も供給も、固定されたり統制されたりしてはならない。つまり、望ましい政策とは、市場を経済領域における唯一の組織力にするような条件をつくり出して、市場の自己調整を保障するのを助ける政策だけということになる。」

 このように、「擬制商品」は国家の政策によって生まれたものであるとポランニーは述べています。こういうところに彼は、「市場経済の極度の人為性の根源」を見出しました。

 ポランニーの文章を読む際に、上記のような形で析出された「人為性」は、重要な意味を持っています。ポランニーは、現状の経済の仕組みの始まりに「極度の人為性」があったのなら、私たちにはそれを変える力がある、と述べているからです。

Karl Polanyi

 たとえば、1977年に刊行された遺稿集の『人間の経済』では次のように書かれています。「人類の歴史とそのなかにおける経済の位置は、進化論者が主張したがっているような、無意識的発達や有機的連続を物語るものではない」し、そのようなことを信じていると「人間のもつ自己の歴史を築きあげる力を弱めるにちがいない」。しかし、「諸制度を変化させる際に」、人間には「正義、法、そして自由の理念を再編成する能力があるのだ」と。

 人間に備わっているはずの変革のための能力を忘れたことに目を向けたポランニーは、その能力を回復するための研究に生涯を捧げました。その軌跡は、今日、そしてこれからの私たちとって大変価値のあるものだと考えています。ポランニーの本や手稿はとても難しいのですが、それゆえにか研究者の関心を惹きつけ、日本語訳や研究書も多いのです。ぜひ、ポランニーの読解に取り組まれることをお勧めします!

小野坂


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買取品目・ジャンル DVD、CD、スーパーファミコンカセット、精神医学、心理学、カウンセリング、岩波文庫、講談社学術文庫等の書籍
商品名・作品名 カール・ポランニー『大転換』『人間の経済』
出張先・エリア 東京都荒川区

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