人の、奥の奥の奥深くへー松谷みよ子『現代民話考』紹介ー

毎日暑いですね。そして雨も降り続き、むっとした感じ。蝉の声も聞こえ始めました。
夏が来たのでしょう。

今日は以下の本を紹介したいと思います。松谷みよ子『現代民話考(5)』(ちくま文庫・2003年)です。

松田みよ子 現代民話考
松谷みよ子は、1926年生まれ。童話作家として有名ですが、各地をたずね民話の収集にも積極的でした。エッセイや小説、詩集なども出しています。
この『現代民話考』(ちくま文庫)は全部で12巻あり、それぞれテーマを設けて、松谷氏が集めた話が収録されています。
写真にしました5巻では、「死の知らせ・あの世へ行った話」が読めます。

例えば、危篤状態で病院に運び込まれた時、自分はベッドに寝た自分の上に浮かんでいて、肉体の自分を見下ろしていた、とか。(26p)

死の床についた男の子が生き返ったが、その子は恐ろしいものを見たと話す。それは鬼に会ったということだった。母はそれを聞き念仏を唱えろと言ったが、父がそれを止めたため、念仏を男の子は唱えなかった。すると五日後に男の子は死んだ、とか。(124-125p)

様々な人の話した、様々な話を読むことができます。この『現代民話考』を手にとるなら、たくさんの人の語りに触れることができるでしょう。

もちろん、この本にとりあげられた話、それ自体が興味深いです。もっと語って!と思って、ページを繰ってしまう。
そして、そのようにして読み進めていくならば、私たちは人の奥の奥の奥に触れることになるのではないか。そう思ったから、今日この本をとりあげました。以下、私の考えを述べます。

この本で読める話は、世界の表には出て来ないものです。ニュースで幽霊とか、黄泉がえりの話は出てこない。表の世界は、秩序立っていて、整っているという体でいる。私たちは毎日定刻に来る電車に乗り、同じ場所に行き、0と1の群れを処理し、決められた時刻に帰り、プログラムされたテレビを見て、寝る。国の審査を通った教科書を持たされ、世界はそのようだと教わる。
しかし、その世界の表の顔からはみ出すのが、この『現代民話考』で読める話でしょう。「科学的に考えるなら」の枕詞で否定されるものが、人々の内部には宿っている、そして漏れてしまう。それが、そのような語りになる。

そうして語られた、人間の奥にあったものを知った時、人間とはこういうものだという認識が少し変わるはずです。秩序の中に私たちはいるように思うけれど、それからはみ出す語りがこんなにあって、うごめいている。表明することのできなかった思いが、言葉にできなかった心が、形を変えて『現代民話考』に収められるような語りになっているのです。

思いをめぐらせば、大きな災害の後は、その地域で死者がタクシーに乗ってきたとか、どこかで死者と会ったとか、そのような話が出ると世間では言われます。そして、そのような話はあまりに大きな出来事、たくさんの人が亡くなり、多くの物が失われた衝撃を、何か物語を作ることで人々が受け止めようとしていることの表れともされているようです。

そんなことありえないとか、それは現実的ではない、科学的に考えておかしいと否定されるような話にも、それを語る人間の中には、語ってしまう理由があるのです。それに触れる時、私たちは、人間の奥の奥の奥を少しだけ、知るのではないか。論理立てて理解できる表面から潜れば、人間には底知れぬ深さがあるはずです。そんな気がします。

今日ご紹介した『現代民話考』などを手に取り、様々な人の語りに耳を傾け、その物語がどうして生まれるかに思いをめぐらせ、またそれを聞く自分は何を思うのか、自分自身についても見つめてみる、人間の奥の奥の奥に近づいてみる、そんな日があるのも良いでしょう。

以上、松谷みよ子『現代民話考』をとりあげつつ、人の様々な語りに秘められたものについて、私の考えを述べてみました。

 

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最後までお読みくださりありがとうございました。

コトー


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参考
松谷みよ子公式HP:https://matsutani-miyoko.net/miyokosroom/publics/index/27/

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