田中角栄『日本列島改造論』(日刊工業新聞社、1972年)が入荷しました #福祉国家 #学術書 

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 今回の投稿では、有名ながらも、その内容の詳細についてはあまり語られてこなかったのでは、思しき本を紹介していきます。その本は、古本市場においても長年、価格が一定の水準に保たれていることで知られています。

日本列島改造論

 田中角栄『日本列島改造論』(日刊工業新聞社、1972年)です。著者の田中角栄は、ここでくどくどと説明する必要ない、戦後日本を代表する政治家です。『日本列島改造論』は田中が自民党総裁選に打って出た際に掲げた政策綱領というべきものです。本書をあえて簡潔にまとめるなら、都市の工業を地方へ移転させることを目指した総合的な国土開発計画の提言、となるでしょうか。

 しかしながら『日本列島改造論』が90万部ともいわれるベストセラーとなったことは、具体的な地名が記された国土開発の構想が知れ渡るといった事態を招きました。それによって、土地への投機が過熱してしまい、田中の構想は経済政策としては成功したとはいい難いものとなってしまいました。また、都会と地方とを結ぶ交通の便がよくなったことも、田中の意に反して、地方から都会への人口流出を促してしまう結果に終わりました。それゆえ、『日本列島改造論』は「田中政治」失敗の歴史の一部分として、長い間顧みられずおり、一部マニアの間で流通していただけだったのかもしれません。

 ところが、近年の田中角栄研究においては、『日本列島改造論』を再評価する議論が出てきています。福祉国家論の専門家である法政大学法学部教授の新川敏光氏によれば、田中の長年の日本列島改造の構想は、「国土開発を国民福祉の改善に結びつけようとする体系的な計画であり、昨今再びその先見性が評価されるようになってきている」というのです。

 新川氏の『日本列島改造論』に対する見解は次のようなものです。

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 『日本列島改造論』には、総論レベルとはいえ、内需拡大による経済成長を目指すフォード主義、ケインズ主義に基づく「大きな政府」論、さらには福祉国家論も盛り込まれており、従来の生産第一主義を克服しようという明確な方向性が示されていた。首相になった田中は「経済から福祉」へのシフトを唱えたが、その背景にはこのような『日本列島改造論』に示された認識があった。したがって田中が、「経済から福祉」へのシフトを提唱したのは、単なる思いつきや機械主義的対応ではなかったといえる。
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※以上は、新川敏光『田中角栄――同心円で行こう』(ミネルヴァ書房、2018年)97-99頁。

日本列島改造論
▲『日本列島改造論』の序文。国際協調と、国内の産業構造および地域構造の改革という、
外交と内政における課題が挙げられている。

 総論レベルということであれば、田中は『日本列島改造論』24頁で、「日本のこんごの進路を一言にして要約すれば『平和』と『福祉』につきよう」と述べています。こうした「体系的な計画」を求める政治的な関心を、田中はどのように獲得したのでしょうか。

 そして、現在の私たちは政治を語る際、平和と福祉についてどれだけの認識を持っているでしょうか。そして両者の関係性はどのようなものとして捉えているのでしょうか。そうした内省に向かうための手がかりとして、田中角栄『日本列島改造論』は今日その重要性を高めているといえます。

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小野坂


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