張りつめた静けさの魅力と怖さー「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 展覧会図録」ご紹介ー

あたたかさと湿り気に春が近いことを感じます。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

本日は以下の図録をご紹介しようと思います。「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 展覧会図録」(日本経済新聞社・2008年)。

ハンマースホイ 図録

この展覧会のポスターを見た時、これは行かなければと思いました。この緊張感と不穏は何なんだろうと。生活感のある室内に人物がいて、激しいことが起こっているわけではないのに、なぜこんなに張りつめて怖いのだろうと。狂気さえ感じる。でもその世界に触れてみたい。
実際行ってみて、すごく充実した時間を過ごせた記憶があります。そして疲れたような気もします。かなりの年月が経ちましたが、入荷した図録を手に取り、それを思い出しました。

自分は展覧会で図録を購入しなかったのですが、やはり買えばよかったと思いました。実際に美術館で過ごす時間が、絵と対峙してその力とか念とかいうものに衝撃を受ける時間であるのなら、それを言葉で整理する助けになるものが後には必要なのかもしれません。図録は豊富な解説で、その要望に応えてくれます。

この図録を少し開いてみます。「ごあいさつ」によれば、ハンマースホイは「17世紀オランダ絵画に強い影響を受けた作風」であり、「フェルメールを思わせる静謐で古風な室内表現を特徴」としているとのことです。
確かに光と影の使い方や柔らかな雰囲気などは、フェルメールに似ているのかもしれません、しかし、フェルメールの絵がその光でこちらをはっとさせるなら、ハンマースホイの絵はその影が見る者をじっとりと不安にさせるように思いました、自分は絵画について全く明るくないのでこのように表現することに自信を持てませんが。
しかし、そもそも知識がなく、フェルメールという比較対象を知らなかった自分には、この「ごあいさつ」もありがたいです。

また、図録に収録されたフェリックス・クレマー「静かなる詩情―ヴィルヘルム・ハンマースホイ」も見てみます。ハンマースホイの作品《室内》(1899年)について述べているところを抜いてみます。
  黒みがかった髪を後頭部でひとつにまとめ、黒いドレスをまとったひとりの女性が鑑賞者の前
  に立つ。彼女は腕を曲げ、僅かにうつむき、陽の光がそのうなじを照らしている。画家が、  
  1899年のこの作品《室内》(cat.52)で、女性を鑑賞者の眼前まで近づけた結果、彼女の脚
  は画面の下縁で切り取られている。それに伴って生じる不動性は、画中で部屋のほとんど半分
  を占める大きな丸テーブルによって彼女の行動の自由が奪われているため、よりいっそう強め
  られている。同時に、彼女の姿とテーブルは驚くほど安定性を欠いているようにも見える。な
  ぜなら、暗くぼんやりと描かれた床がそれらを何ひとつ支えていないためである。(11ペー
  ジ)
解説されている絵は以下です。

ハンマースホイ 図録

このすごく嫌な感じ。うなじの白さは、美しさより死のにおいがするようで。自分だけでは、そのような感覚にしかなれなかったけれど、解説されると、静かな閉塞感は開けられていない扉と大きな机によるものであるというのに納得するし、対して床が闇であるのがこちらを不安にさせるのだということがわかりました。絵は言葉抜きでこちらに迫ってくるけれど、それを言葉で説明されるのは、わからなさが少し減り何かを手懐けられたような気がして、快楽です。作品はどこまでも深く果てがなくて、いつだって「わかった」という安心感が覆されるだろうとわかりつつも。

図録に印刷されるなら絵は力を抑制され、閉じ込められてしまっているのだろうから、やはり作品に対峙しないとそのものの持つ波動は感じられないだろうけど、解説と共に様々考えるには、図録はよいものだと改めて思いました。
以上、本日は「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 展覧会図録」をご紹介しました。

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本日もお読みくださりありがとうございました。

コトー


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