F・K・カウル『アウシュヴィッツの医師たち――ナチズムと医学』日野秀逸訳(三省堂、1993年、原著1976年)が入荷しました

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 くまねこ堂では様々な分野の書籍、骨董を取り扱っています。お電話またはメールフォーム、LINEにて、お気軽にお問い合わせ下さいませ。スタッフ一同心よりお待ちしております。今回はそのような買取品の中から、医学に関する書籍を紹介します。その前に、やや一般的な話から入っていきたいと思います。

 医学に限らず、「科学」や「学問」と聞くと、世間の素人から切り離された専門家の耳慣れない解説が思い浮かぶ方も多いと思われます。良くも悪くも専門家の役割は、限られた範囲での厳密さを突き詰めることにあります。とはいえ、私が見聞きした限りでいえば、宗教家が天上の楽園に生きているのではなく、地上の社会で布教している以上、社会の現実を知るよう努めているように、科学の専門家も、自身の専門性を磨くとともに、現実の社会と向き合うべく努力しています。

 他方で、科学をめぐる政治、という形で、専門家の世界と権力の世界とが急接近することもしばしばです。先述のように専門家の特徴が限られた範囲での厳密さだとするなら、政治はそうした専門領域を巻き込んで権力基盤を形成していきます。専門家が自覚的に、社会に開かれた学問を目指して政府との関わりを強める場合はもちろん、専門性にこだわった(否定的に表現すれば、閉じこもった)真面目な努力が、途方もない政治的暴力に加担していた事例も歴史にはあります。

 そのような科学と政治権力の問題については、次の在庫がございます。

F・K・カウル『アウシュヴィッツの医師たち――ナチズムと医学』日野秀逸訳(三省堂、1993年、原著1976年)

 F・K・カウル『アウシュヴィッツの医師たち――ナチズムと医学』日野秀逸訳(三省堂、1993年、原著1976年)です。副題の通り「ナチズムと医学」の密接な関わり、すなわちナチス・ドイツ下のユダヤ人虐殺における医師たちの責任を問うた著作です。このこととの関連で、以前にナチス・ドイツの「健康運動」を扱った書籍を紹介しました。下記URLからご覧ください。

※ロバート・N・プロクター『健康帝国ナチス』宮崎尊訳(草思社文庫、2015年)が入荷しました~「無責任な純粋さ」と「死への欲望」(くまねこ堂古書ブログ、2023年3月12日)
https://www.kumanekodou.com/32769/

 ところで、第二次世界大戦(1939-1945年)において、1945年5月に降伏したドイツは、英米仏ソ四国による分割占領統治の対象となりました。この分割占領のハイライトは、それぞれの国が自国の占領を正当化するために、競って公衆衛生の再建に取り組むことになったことです。第二次世界大戦の勝者の側にも、医学と政治のきわどい関係性を含んだ歴史があります(※)。

※Jessica Reinisch, The Peril of Peace: The Public Health Crisis in Occupied
Germany (Oxford: Oxford University Press, 2013), pp. 295-297.

 一見古い歴史に思えることが単なる過去ではなく、現在の地点から振り返るべき重大な出来事となって私たちに接近してくることがあります。その過去からの接近を見逃すことなく直視していく努力が今日いっそう求められています。

小野坂

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