ヒロインは何を着るのかー新海誠「すずめの戸締まり」と宮崎駿「千と千尋の神隠し」についてー

商店街にクリスマスツリーが出現しています。光っています。
世界は自分の滞留とは無関係に展開している…。

本日はアニメ作品を2つ取り上げ、その中でヒロインが何を着ているのかに注目してみたいと思います。扱うのは、新海誠「すずめの戸締まり」と宮崎駿「千と千尋の神隠し」です。
この二つについて、ヒロインが自分の大事な人を助けに行く時の服装を比較してみると、それぞれの作品の、ヒロインによる「救い」の特徴が見えるようです。

まず、新海誠「すずめの戸締まり」について。映画内でのすずめの服装を思い出してみます。
物語の始まり、すずめは女子高生で、制服姿で登場します。そして、椅子になった草太と共に全国を旅していくのですが、その中で、愛媛の海部千果に私服を借ります。すずめが、制服の家出少女として目立ってしまわないように、千果が配慮してくれたのでした。しかし、物語の最後は彼女はもう一度制服に戻ります。草太を助けるべく、東京の御茶ノ水辺りで最大の戸締まりをする時です。彼女は東京の草太のアパートで制服に着替え、意を決して出かけて行くのです。

すずめは、草太を人間に戻し、かつ大災害の発生を止めて日本の人々を助けるという、大きな役割を担っていますが、それを果たす時、彼女は制服なのです。この物語では、彼女の聖性は女子高生であることに依ってるということがわかります。

彼女は女子高生として映画に現われ、草太と出会いました。ボーイミーツガールは、ピュアな女子高生の体験としてあったわけです。そして、日本を旅する中で様々な人と交流するという、女子高生としては普通は行わない経験をしました。その時は、千果の私服を着ており、女子高生であることから離れていました。しかし最後、自分の大事な人も世界も救うという時は、すずめはまた女子高生になります。この物語作者は無垢な女子高生の特別な力を信じていて、制服姿の女子高生にこそ、男の子と日本と世界を救ってほしかったのですね。

劇場で観た時、すずめが物語最後に制服に着替えるところは、なかなか複雑な気持ちになりました。女子高生というイメージに物語作者が期待することの大きさ、幻想の強さは、単純な肯定はしにくいかもしれません。
皆さまはどうご覧になったでしょうか。

一方の、宮崎駿「千と千尋の神隠し」はどうでしょう。

千と千尋の神隠し 久石譲

千尋は最初、私服で登場します。ボーダーTシャツと半ズボンですね。結構ヨレヨレで、物語作者は、彼女を普通の子として扱っていることがわかります。特別な子ではないのです。そして、湯屋で働くようになってからは、湯屋の仕事着を着ています。千尋は人間世界から別の世界へ渡ってしまったわけですが、そちらの世界で生きていくために労働をしています。その状態を、仕事着は示しているのです。しかし、ハクを助けるため、銭婆のところへ行く時、千尋はまた、ボーダーTシャツと半ズボンに戻ります。ハクを助けることは、湯婆婆との契約で湯屋で労働するというそれまでの行動から、逸脱するものでした。彼女は湯屋の労働者ではなく、個人としてハクを助けに行くのです。それを、仕事着から私服への着替えが示しています。ハクと再会し、ハクの本当の名を知らせた後、湯屋に戻る時も彼女は私服です。もう、千尋は個人として考え、行動するようになっているからです。彼女は湯婆婆を「おばあちゃん」と呼びます。

まとめると、千尋はありふれた少女として物語に登場し、あちらの世界に迷い込み湯屋の労働者となり、名前を奪われました。そのことを、私服から仕事着への変化が示しています。しかし、自分の大事なハクを助けに行く時は、湯屋の人間としてではなく、個人として行動していました。それを、もう一度私服に戻ることで表しています。そして彼女はまた、個人になって、こちらの世界に帰ってくることになります。このように見てくると、物語作者は、集団の一人ではなく、個人の意志を持つことを重要視しているのだとわかります。そして、そのような個人の行動であることを千尋の私服は表していて、その彼女であるからこそ、ハクを救えたのですね。

これまで自分は千尋の服装についてあまり気にしてこなかったのですが、「すずめの戸締まり」のすずめとの服装と対比すると面白いと思いました。どちらも、A→B→Aという形をとりますが、すずめはAが制服でBが私服である一方、千尋はAが私服でBが仕事着です。

すずめが自分の大事な人を助けに行く時は、制服、つまり社会の要請を体現するものを着ていますが、千尋のその時は、私服、つまり自分の意志を示すものを着ています。彼女たちの行動は、「自分の大切な人を救う」という点で同じですが、服装が示していることは、逆であるのです。
すずめは制服を着て、女子高生だと我々が思う「女子高生」を自ら負います。千尋は、湯屋の世界から逸脱し、自分の気持ちに従います。どちらも自分の大事な人を救うことが物語の最後にある映画ですが、このような比較をすると、それぞれの映画の中での「救い」がどのような性格のものなのか、少し見えてくる気がします。社会の要望に沿うものなのか、それとも集団を離れた自分の意志によるものなのか。
思い付きでつらつら書いてしまいましたが、もう一度観返してまた考えてみたいと思います。

以上、新海誠「すずめの戸締まり」と宮崎駿「千と千尋の神隠し」について、ヒロインの服装に注目して考えてみました。皆さまが映画について、思いを巡らしてみるきっかけとなれば幸いです。

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参考
・映画「すずめの戸締まり」サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/

・スタジオジブリ「千と千尋の神隠し」サイト:https://www.ghibli.jp/works/chihiro/

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