【「植民地大学」の本】京城帝国大学法文学会の経済分野の論集が入荷しました~「東大学派」かと思いきや、実は「京城帝大学派」⁉

 先日は、松戸市根本のお宅へ、ラテンアメリカ文学、ジャズCD、講談社文芸文庫、講談社学術文庫、ちくま文芸文庫、岩波文庫の買取でうかがいました! ご依頼いただきありがとうございます!
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 学術書の買取品を整理していたところ、興味深い書籍が出てまいりましたので、本ブログで紹介いたします。教育史がご専門の都内の大学の先生よりお譲りいただいたお品物で、古いものでは昭和0年代(1926~1935年)刊行のものがございます。それら書籍は、その当時は最新の研究として、現在では教育史の史料としての価値を有すると思われます。

 ところで、昭和戦前期の日本の教育史といったところで、何を思い浮かべるでしょうか。現在7、80代のご親族から、幼少期の軍国主義教育のお話をお聞きになられた方もいらっしゃるかもしれません。けれども、当時の日本は現在とは、その地理的範囲が異なっていました。台湾や朝鮮半島は日本の植民地であったわけです。この点も忘れるわけにはいきません。近年、植民地に創設された京城帝国大学(現:ソウル市所在)、台北帝国大学といった「植民地大学」についての研究で重要な成果が出されています。

 そうした近年の研究が着目しているのは、例えば次のようなことです。人文社会科学の面では、近代日本が植民地を抱えた「多民族帝国」となっていったことと、日本人という単一の民族で構成されている「国民国家」という建前とのズレについて、憲法学や国際関係思想の分野から検討した研究があります。また、自然科学の面では、東アジアという地域規模での公衆衛生に関する学知の蓄積にあたって、「植民地大学」が果たした役割が明らかにされています。とりわけ後者については、韓国や台湾が新型コロナウイルス対応で成果を上げるなど、かえって旧宗主国の日本が遅れをとっている現状を思えば、今こそ再訪されるべき歴史といえましょう。

酒井哲哉・松田利彦編『帝国日本と植民地大学』(ゆまに書房、2014年)▲代表的な研究として、酒井哲哉・松田利彦編『帝国日本と植民地大学』(ゆまに書房、2014年)。

 くまねこ堂に入荷したのは、京城帝国大学法文学会の論集のうち、商業出版された経済分野の書籍になります。

京城帝国大学法文学会論集 朝鮮経済の研究

 こうした論集で活躍していた人物らは、日本の敗戦と植民地の放棄を経て、「内地」の大学や研究機関に所属することになりました。その中には、戦後日本の学派の主流をつくり上げることになった著名な教授も散見されます。いくつかの分野では、「東大学派」かと思いきや、実は「京城帝大学派」だったということがあるわけです。とはいえ歴史的経緯をたどれば、そうしたことは、何ら不思議なことではないのです。そのようなことを意外に思ってしまうほどに、私たちは「近代日本」「東アジア」を知らないのではないでしょうか。

 現在の視点で注目すべきなのは、そうした「植民地大学」を起点とする学知が、国境の垣根を前提とする「国民国家」システムに収まりきらない問題領域を次々に発掘し、考究するものであったことです。経済的なグローバリゼーションの進展とその同時並行のストーリーである環境破壊と感染症拡大に直面しながらも、「国民国家」以外のシステムを想像すらできない現在の私たちにとって、「植民地大学」の学知にふれることは、ものごとを考える重要なきっかけになるはずです。

 くまねこ堂ではこうした学術書も積極的に扱っております。ご自宅の整理などでお困りのお客さまは、是非くまねこ堂までお申しつけ下さいませ。ご気軽にご一報くださると幸いです。

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小野坂


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