中村隆英『昭和を生きる――一エコノミストの回想』聞き手・阿部武司、伊藤修(東洋経済新報社、2000年)が入荷しました~バブル崩壊の傷跡

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 最近、近代日本・近代ヨーロッパ史の書籍が続々入荷しています。その中には、必読書にして現在では入手しにくいものなども含まれております。ここには、扱っているテーマでいえば、政治・経済・民族などの研究書が含まれます。あるいは第一人者の回想録といった形で、入門書でもあれば玄人も唸らせる本も見受けられます。

 その中から、最近のニュースとの関連でご紹介したい一冊があります。まずニュースのほうですが、4月12日の『日本経済新聞』に「消えた12億円 日銀、新型ETF購入ゼロの真意」という記事が掲載されています。日銀のETFは、上場投資信託といって、日銀が信託銀行を介して株式を購入する行為で、オペレーション(公開市場操作)の一種です。そして新型ETFとは、日銀が設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援することを目的としたETFを指します。そして、4月に入ってからは新型ETF購入がゼロの日が続いています。何がニュースなのかというと、この新型ETFは2016年4月に導入されて以来、「従来、5年間にわたり毎営業日12億円の買い入れを原則としてきていた」のに、今年4月に入って購入がゼロだ、ということになるわけです。

※編集委員 清水功哉「消えた12億円 日銀、新型ETF購入ゼロの真意」(日本経済新聞、2021年4月12日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH098HG0Z00C21A4000000/

 また、この投稿を作成している13日までの話ですが、通常の日銀ETFも買い入れがありません。日銀が株式市場から徐々に撤退しようとしているのか、だとするとどのような影響が出てくるのか、気になるところです。新型コロナ禍を引き金とした不況の到来が懸念される中で、日銀が株式市場から手を引き始めるということになれば、不況をより悪化させるのではないか? だからといって、いつまでも日銀が株式を買い支えるようなことを続けていいのか?と不安が募ります。

 そうした不安に対処するためには、とりあえず、これまでの歴史を知ることが手がかりになると思われます。何かいやな感じはするものの、よくわからないから不安になるのです。現状がどうなっているのか考えるのに、まずは、日本経済のこれまでの過程を知る必要があります。だんだん視界が開けてくると、不安も収まってくるかもしれません。おそらくは恐れるべきものがはっきりしてきて、恐怖を感じるようになるのでしょうが、それでも、わけのわからない不安を抱えているよりはましです。

 だからといって、日本経済史をどこから、何から勉強してよいやらわからない、と途方に暮れる方も多いかもしれません。新刊書店で経済の棚を見渡して、コレだ!という本には出会えない可能性が高いです。新しく出た本は、専門性が高まり厳密さが増しているかもしれませんが、それゆえに初心者では読むのが困難という事情もあります。他方で一見読みやすくとも、過度に単純化されていて、結局は追加で勉強が必要な本を手にしてしまう場合もあります。

 そこで、冒頭で述べた、第一人者の回想録に着目したいと思います。ちょうど、次のような本がありました。

中村隆英『昭和を生きる――一エコノミストの回想』聞き手・阿部武司、伊藤修(東洋経済新報社、2000年)

中村隆英『昭和を生きる――一エコノミストの回想』聞き手・阿部武司、伊藤修(東洋経済新報社、2000年)です。中村 隆英(なかむら たかふさ、1925-2013)は、『日本経済―その成長と構造』、『昭和恐慌と経済政策』で知られる著名な経済史家(東京大学名誉教授)です。経済構造の分析をもとにした長期的な傾向をふまえつつ、その時々の政治判断が持った意味を捉えるような、分析の広さと深さを兼ね備えた叙述には定評があります。

 本書には、1990年代が、第一次世界大戦後の好景気から世界大恐慌にいたる1920年代に匹敵する重要な時代だという話題が出てきます。1990年初頭のバブル崩壊は現在にまで日本社会に傷跡を残しています。日銀の一挙手一投足に戦々恐々としてしまうのも、バブル崩壊のツケに私たちが向き合ってこなかったことが原因だという見方も、あながち大げさではありません。

 そういうわけで、1990年代をどう見るか、という質問に対する中村先生の答えを引用してみます。
 
「一つは異常な円高が一九八五年から始まって、それまでには考えられなかったような変化が次々に起こっていったわけですね。だから、円高のなかの経済というものについて、みんな手探りをしているようなところがあった。しかも、日本に対する国際的な評価が高くなりすぎて、いろいろな利益がどんどん出てくる。株を買っても不動産を買っても儲かるような国になったものですから、各企業がそういうことで利益をあげるのが当然だという状況になったのでしょう。しかし、本業よりも経理部の財テクのほうが利益が多いというのはやはり正常ではない。だから、それを早くおさえなければならないのにタイミングを失した。これは間違いなく言える。もう一つ言えるのは、多分平成二(一九九〇)年に引き締めた後の締め方がきつすぎて、緩和するタイミングがなくなった。それがまずかったと思います。」(238-239頁)

 これが出版されたのは2000年のことですが、「緩和するタイミング」という点は、現在では逆というか、異次元の問題となっています。2013年に成立した第2次安倍政権以降の「異次元」金融緩和の出口が見えないわけです。他方、高度成長を経て「株を買っても不動産を買っても儲かるような国」になったという成功体験については、大企業に関していえば、「本業よりも経理部の財テクのほうが利益が多い」という異常な経営が常態化したかのようです。

 このように、2000年の段階では予想しえなかった政治的変化、他方で、1990年代から尾を引いている問題の両面から目を切らずに、日本経済について考えていく必要があるのではないでしょうか。この引用部分に限らず本書は、さまざまな考える手がかりを含んでいそうです。

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