複雑怪奇な18世紀のオペラ劇場 /埼玉県川口市で出張買取りでした。


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「当世流行劇場」ベネディット・マルチェッロ著/未来社

が入ってきたので読んでいるのですが、いやはや、なかなか強烈であります・・:ga-n:
この「当世流行劇場」という本は、ヴェネツィア共和国の貴族であり作曲家としても知られた人物の
著書なのですが、退廃を極めた18世紀当時のヴェネツィアのバロック・オペラの舞台裏を
辛辣に暴き立てている風刺書です。

現代では、「オペラ」というとなんだか敷居が高くかしこまったイメージがあると思うのですが、
18世紀当時の様子は全く違っていたようです。

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(訳者解説より抜粋)

オペラはほとんどが、毎回新たに作られ、初演され、消え去っていくものばかりで、
この点では、今の日本のテレビドラマ的といってもいいでしょう。

また、劇場という存在は、今でいう劇場というだけではなく、社交場、クラブ、バー、レストラン、
カフェ、カジノ、テーマパーク、テレビ、ラジオ、そしてラブホテル、風俗までを兼用した
総合的なエンターテインメント施設でした。つまり、当時のイタリアでは、
町の娯楽のほとんど全てが、劇場に集中していたと考えていただきたいのです。

一階の平土間は、劇場によって、席が置かれていたり、立ち見だったりしていました。
平土間は下層市民のための場所で、どこかしらいかがわしい人間たち、労働者や職人たち、
召使い、ゴンドラ漕ぎ、無鉄砲な若者たちがうごめいて、舞台を気にすることなく、
物を食べたり、煙草を吸ったり、政治を論じたり、カード遊びで騒いでいました。
ひっきりなしに、ささやき、笑い、拍手、口笛、動物のような叫び声が聞こえ、
アリアの最中に主役の名を呼んで喝采し、掛け声をかけたといいます。
また、ゴンドラ漕ぎはさくらとして雇われている場合があり、
そういう時には入場無料だったようです。

そして、上のバルコニー席からは食べ物のかすが、リンゴやオレンジの皮、
油だらけのマカロニなどが投げ落とされ、有名歌手を称えるソネットを刷った紙が降ってきたり、
仮面をつけた紳士の吐いたつばが飛んで来たりします。平土間の庶民たちも慣れたもので、
そうした非礼に怒ることなく、容赦ない皮肉で押収します。
その間を、いかがわしい女たちが飲み物や彼女たち自身を売り歩いていました。

まわりを囲む何層ものバルコニー席は、劇場のパトロンや貴族や金持ちといった
有力者たちの定期契約となっていて、彼らにとって一種の応接間となっていました。
借り主の好みによって高価なタペストリー、シャンデリア、姿見、ソファといった
内装がしつらえられ、扉に鍵をかけて、舞台に面した鎧戸の窓を閉じると、
そこは全くの密室となります。紳士淑女の観客たちは、お互いにバルコニー席を訪問しあい、
女たちは噂話に鼻を咲かせ、男たちは、政治上の、取引上の密談を凝らし、
そして男も女もそれぞれ愛人を引き込んで、格好の密会の場としていました。

また、一番下のバルコニー席は、平土間席で商談を成立させた娼婦たちの仕事場として、
一種のラブホテルとして認められていたようなふしもあり、劇場支配人も
娼婦たちを客寄せのために無料で入場させていたとのこと。

そのような観客の要望に応えるため、劇場では料理や飲み物を頼むことができました。
バルコニー席にさまざまな飲み物、凝ったビュッフェや夜食を運ぶため、
召使いたちが狭い通路をひっきりなしに行き来して、通路はごった返していました。

また、不安定なチケット収入やバルコニー席の賃貸収入をカバーするために、
劇場のロビーやゲーム室には、賭博のテーブルが抜け目ない劇場支配人によって設けられ、
堂々とそこで賭博に興じることが出来ました。賭博場は幕間だけでなく、
オペラの上演中も開いていて、退屈なレチタティーヴォに飽きた観客がここでひと勝負して、
華麗なアリアが聞こえてくると、あわててバルコニー席に戻っていったりするのでした。

いうなれば、第二国立劇場のロビーに、パチンコ台やスロットマシンが
大量にあるようなものです。華麗なオペラを作るのには、とにかく膨大な金がかかるもの。
ヴェネツィアに今もカジノが存在するのも、こういった伝統からでしょう。

(中略)

舞台を見るより、社交や逢引にいそしんだり、魅惑的な浮かれ女がいたり、
賭博の興奮があったり、美味しいもの、楽しいものが劇場にあれば、
すぐそちらに関心が向いてしまう人々、それがあくまで自分の快楽を主体に行動した
バロック時代のヴェネツィアの観客でした。
ある意味ではまさに悪徳の巣、言い換えれば、人間の生の欲望が
さまざまに渦巻いているのが、劇場という世界だったのです。

このような複雑怪奇な18世紀のヴェネツィアのオペラ業界の裏で、必ず成功を収める方法を、
かくもシニカルに、毒のある風刺に満ち満ちてまとめたのが、この「当世流行劇場」という作品です。
この小冊子によって、私たちは19世紀、20世紀を経過する前の、
18世紀のバロック・オペラの世界を覗き見ることが出来るのです。

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いやはや、今のクラシック演奏会の雰囲気とはあまりにかけ離れていますよね、
強烈な世界だわ・・(汗)

私は割とバロック音楽が好きで、モンテヴェルディなどのバロック・オペラも好んでかけるのですが、
部分部分はすごくかっこいい曲や素敵な曲があるのだけれど、
全部通して聴くと冗長でどうしても退屈してしまうのです。
違う作品の中で同じ旋律が使い回されていたりもしますし。

でもその理由が、当時の劇場の様子を読むとよくわかりますよね、
今のようにオペラの最初から最後まで観客がしっかり聴いていたわけではなく、
それどころか聴かせどころの派手なアリアをのぞいては、
単なる騒々しい社交場のBGMだったのでしょうねえ・・:|


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