高峰秀子、その壮絶なる人生

人気ブログランキングへ 現在1位です(本・読書部門)、どうもありがとうございます!   先日、女優・高峰秀子さんの映画DVDをご紹介しましたけれども(2012/7/26の記事)、 今日はさらに気合を入れて、高峰さんの名著「わたしの渡世日記」をご紹介したいと思います!   (写真は「不滅のスター高峰秀子のすべて」より) 素晴らしい美貌と、演技の才にも恵まれた大スター。 さぞや順風満帆のきらびやかな生活を送っていたのかと思いきや、 本の冒頭からその予想は見事に覆されます。 ———————————————————– 私は鏡をのぞくとき、私がまだ少女のころ、「お前なんか人間じゃない、血塊だ」と 母にののしられたことを思い出して暗澹となることがある。 鏡に映る私は、人間の顔をしていても、実は赤紫色をしたグジャグジャの 血のかたまりなのかもしれないと思うと、なけなしの自信はもちろん、 生きてゆく張りさえ叩きつぶされるような、やりきれなさにおそわれる。 (「わたしの渡世日記」より) ———————————————————– 心ない母親(義母)との、生涯に渡っての凄まじい確執。 わずか5歳で子役デビューして以来昼も夜も働かされ、 その小さな両肩で、義母とその親族10人の生活を養わねばならなかったこと。 小学校にもほとんど行くことができず、撮影所やロケに出発するときに 担任の先生が駅に駆けつけて渡してくれた子供向けの雑誌のおかげで、 あやうく「文盲」をまぬがれたことなど、 その壮絶な半生は私の想像を遥かに超えるものでした。 また本の中には、邦画全盛期の監督や俳優、文豪や画家、学者や音楽家など、 高峰さんが関わりを持った錚々たるメンバーの逸話が随所に出てきます。 そしてその才気あふれる文章は読む者を飽きさせず、示唆に富んでいます。 一部を少しご紹介してみます。 ———————————————————– 私は無学のせいか、こわいもの知らずで、「偉い人」を恐れない。 あちらがたまたま「偉い」だけで、こちらが「偉くない」だけで、 人間であることにかわりはないからである。(中略) だいたい、エライとかエラクナイとかいうことは、他人が決めることで、 自分が決めることではない。私は女優という職業柄、ずいぶん大勢の人間を見てきたけれど、 人間は本当に偉くなってしまうと、もろもろの虚飾やゼイ肉が蒸発して、 地金だけが底光りしてくる。 私は不完全人間だから、どうしても完成された立派な人物にあこがれる。 ———————————————————– 私はいつも、じぶんの人生を「おかげ人生」だと思い、今もそう思っている。 まず、映画俳優の仕事は画家や彫刻家と違って、一人では絶対にできない。 だれかがライトを当ててくれなければ、だれかがカメラをまわしてくれなければ、 私がいかに熱演しようとも画面には映らない。(中略) 人間は一人では生きることも死ぬこともできない哀れな動物だ、と私は思う。 自分一人で生きているつもりでも、実は数えきれぬほどの他人の世話になり、 他人のおかげで生かしてもらっているのだし、死んでから起き上がって 自分の墓にまで歩いて行って無事におさまるというわけにはいかないから、 死んだあとにも、やはり他人の世話になるのだ。 これが「おかげ人生」でなくてなんだろう? ———————————————————– 私は「自分のことは自分でする」ことに慣れている。長い映画生活の間には、 何度か「決断」を迫られる問題に出くわした。 そのたびに、私は貧しい脳みそをかきまわるようにして自分の方向を決めた。 結果は、成功もあり、失敗もあり、傷つき、泥にまみれ、数えきれぬほどの恥をかいてきた。 私は中国のことわざにある「昼のために夜がある」という言葉が好きだ。 苦労は苦労のためにするのではなく、明日という巧妙に向かっての下塗りだと思わなければ、 とてもじゃないが無数の「恥」をブラブラぶら下げて生きてなどゆけるものではない。 ———————————————————– 本屋の棚には、ナントカ入門とかいう本がズラリと並んでいる。 茶の湯入門、習字入門、フランス語入門、陶磁器入門、というたぐいである。 私はそういう本を一冊も読んだことがない。基礎から入って徐々に奥深く勉強するという ヒマがなかった、というのがその理由である。 だから、絵でも陶器でもいきなり「良いものばかり見ちまえ」という方法をとってきた。 「良いもの」を見ておけば、自然に「悪いもの」が分かるはずだという 乱暴な考えかたをしたのである。 ———————————————————– 私がこの本を読んだときは、高峰秀子さんの映画を見たこともなければ顔すら知らず、 名前を聞いたことがあるという程度だったのですが、 夢中になって上下巻を読み進め、読み終わる頃にはすっかりファンになってしまいました。 そしてドキドキしながら実際に映画をDVDで観てみたら、なんと素敵なことか! 川口松太郎が「人生の指導書」と本書を絶賛したとおり、 一人の女性として、人間として、高峰さんの生き方からは学ぶべきところが数多くあり、 この本は私にとって大切なバイブルになりそうです。

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