英国人写真家の見た明治日本 /東京都杉並区で出張買取りでした。

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こちらの本を読んでいます。
「英国人写真家の見た明治日本~この世の楽園・日本」
ハーバート・G・ポンティング著、長岡祥三訳/講談社学術文庫

著者のハーバート・G・ポンティング氏はスコット南極探検隊にも同行した写真家で、
世界中を旅し、中でもことのほか日本を愛し「この世の楽園」と讃えたのだそうです。

昔の日本を旅した外国人による「日本旅行記」は色々と読みましたが、
その中でもこのポンティング氏の著書は日本に対する優しい愛情にあふれており、
文章も上品で美しいです。
写真家ならではの、当時の写真も多数掲載されており、貴重です。
京都や阿蘇山・浅間山・富士山、鎌倉や江ノ島などの観光地の様子や人々の様子、
日本の女性たち(すごい褒めっぷりです!笑)、そして日本の美術品や工芸品についても
熱く語られています。

こちらは、京都の名工、黒田氏(青銅の象嵌師)の家を訪ねたときのエピソードです。

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彼の家を三度目に訪問したとき、彼はこう言った。
「あなたは私の仕事のことをほんとうにお知りになりたいようですね。
 では、これからお教えいたしましょう。大抵の外国人は青銅細工のことを
 知っていると思っていますが、ほんとうにそれについて知識を持っている人は
 ほんのわずかしかいません。多くの外国人に私の一番良い作品を見せるのは、
 報いのない仕事です。というのは、ある作品がそれとそっくり同じに見える他の作品に比べて、
 何故値段が四倍も五倍もするのか、彼らには理解できないからです。
 教育のある日本人でさえ、美術品の蒐集家でないかぎり、
 日本の美術について何の知識も持っていません」(本文より)

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そして、黒田氏は近くの棚に行き、注意深く慎重に考えた揚げ句、
たくさんの箱の中から一つを選び出し、その中から青銅の飾り板を取り出して
ポンティング氏に見せ、尋ねました。
「さて、これをどう思いますか?」
ポンティング氏はその飾り板を注意深く調べ、黒田氏に答えました。
「私が今まで訪れたどこの店でも、その図柄においても細工においても、
 これほど美しい品物を見たことがないです」と。
すると、黒田氏の答えはこうでした。

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「私がその品物をどう思っているか、分かりますか?
 今ご覧になっているのは、単なるがらくたに過ぎません。日本の蒐集家は二度とそれを
 見向きもしないでしょう。では、目の利く日本人が上等の品物だという物をお目にかけましょう」
(本文より)

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そういって黒田氏はもう一つの箱を開けて、同じような大きさの飾り板を取り出し、
ポンティング氏に手渡しました。

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両方の作品を並べて、よく観察してみると、それだけでも良い勉強になった。
片方の作品は確かに美しかったが、もう一方の作品は比較にならないほど美しかった。
両者の間には、手造りのカット・グラスと型押しのカット・グラスほどの相違があった。
この違いは最初ちょっと見ただけでは分からないが、細かく調べてみるとはじめて、
大変な技巧と莫大な労力が片方には費やされ、もう一方にはそれが欠けていることに
気がつくのである。二枚目の飾り板の値段は三十ポンドで、最初に見た飾り板の
四倍近い値段であった。嵌め込んだ金や銀の厚みが厚く、青銅の品質も一段と上等であったが、
値段の高いのは、主としてこれだけの細工をするのに費やされた技術であった。(本文より)

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ここで、私は女優の高峰秀子さんが著書「わが渡世日記」の中で書いている、
「(自分は)絵でも陶器でもいきなり「良いものばかり見ちまえ」という方法をとってきた。
  「良いもの」を見ておけば、自然に「悪いもの」が分かるはずだ」
という言葉を思い浮かべました。
音楽でも美術でも骨董でも、その他きっとどんなジャンルでも一緒だと思うのですが、
 「見極めることのできる目」を持ちたいと思ったら、
やはり「悪いもの」をどんなにたくさん見ても意味が無くて、
「良いもの」を吟味して見ることが最良の早道なんだろうなあと思います。


『精巧な細工の施された刀の鍔(つば)』 (「英国人写真家の見た明治日本」より)

最後に、当時の日本の一級の工芸品が、
海外でどれほど驚きの目で見られたかということがわかるエピソードをご紹介したいと思います。
ポンティング氏は「S・駒井」という鉄の象嵌職人が作ったシガレット・ケースを持っていて、
彼がこのシガレット・ケースをスペインで最も有名な象嵌細工の工房に
持って行ったときのお話です。

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この美しい日本の工芸品は、いくら見ていても決して見飽きないほどであったが、
私がその真価をほんとうに認識したのは、スペインで最も有名な象嵌細工の工房として
知られているトレドの大きな刀剣製造所を訪問してからのことである。
ある日私は象嵌細工をしている部屋に入っていって、ケースを取り出し、
職人の長の机の上にそれを置いた。その男は驚きの叫び声を上げてそれを手に取り、
一目見るや否や、一言も言わずにそれを持って、もう一つの部屋に入っていった。

五分後に彼は五、六人の他の男たちを連れて戻ってきた。彼らは方々の部門の長であった。
この熟練した職人たちは、半時間ほど拡大鏡でケースを微に入り際に入り調べ上げて、
溜息をつきながら今までこれほどの品物を見たことがない、意匠の美しさにおいても
仕上げの完璧なことにおいても、これに匹敵するような技術を持った者は
スペインには一人もいないと言った。その日以来、この美しいシガレット・ケースは
私にとってなお一層貴重な品物となった。それはその価値に対する私の評価が
間違っていなかったことが、ヨーロッパの最高の専門家によって確認されたからである。
(本文より)


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