朝井まかて「恋歌」~なぜ水戸藩は表舞台から消えてしまったのか

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本日は、朝井まかてさんの「恋歌(れんか)」をご紹介させていただきます。
本作は直木賞受賞作ということですが、実際に読了してみて、
ああこれは本当にすごい本だ・・と思いました。


「恋歌(れんか)」朝井まかて/講談社学術文庫

主人公は、樋口一葉の師として知られる歌人・中島歌子です。
時は幕末、商家の娘に生まれた歌子は一途な恋愛を成就させ、
18歳のときに水戸藩の藩士・林忠左衛門以徳(はやしちゅうざえもんもちのり)の
もとに嫁ぎます。

しかし時代は、歌子に過酷な運命を課しました。
当時水戸藩の中では「天狗党(尊王攘夷)」と「諸政党(保守派)」が
対立しており、やがてその抗争が激化。
藩内で二派に分かれて凄絶な弾圧・報復が始まり、
その対象は男性達だけでなく何の罪もない妻子達にまで及び、
歌子も劣悪な牢屋敷に投獄されることになります。

・・このあたりの描写は、読んでいてとても辛いものでした。
朝井まかてさんの作品にはいつも、
全体を通して温かい慈愛のようなものを感じるのですが、
しかしこの場面では、このように残酷で悲劇的なことが
現実に起こったであろうことを読者(後世)に伝えたいのだという、
強い覚悟のようなものすら感じました。

「本書が第150回直木賞を受賞した際、選考委員の浅田次郎氏は、
 『幕末期の水戸藩といういわば時代小説の不可触領域に踏み込んだ、
  勇気ある作品』と讃えた。
 
 不思議に思ったことはないだろうか。水戸藩といえば古くからの尊皇派、
 桜田門外の変を起こし幕末維新の火蓋を切った藩である。
 ところが明治政府の顔ぶれの中に、水戸藩士の名前は思い浮かばない。
 
 なぜ水戸が表舞台から消えてしまったのか。その答えが本書にある。
 薩長のように志を遂げたわけでもなく、会津のように戦って散った
 わけでもない。他の藩が新政府と幕府に分かれて戦っているとき、
 水戸は藩の中で仲違いをしていた。班内が敵味方に分かれ、殺し合い、
 維新後には中央政府に送れるような人材が残っていなかったのだ。
 (解説より)」

このような幕末の水戸藩の歴史を、
自分はまったく知らなかったので衝撃を受けました。
また、明暦3(1657)年から明治39年(1906)年まで
250年(!)もかけて完成したという(『大日本史』の編纂と完成)、
徳川光圀が始めた有名な「大日本史」の編纂事業が、
いかに水戸藩の財政を圧迫し続けたかということも、
本書を読んで初めて知りました。

最後はまかてさんらしく、救いのあるエピソードで幕切れになっており、
読み終わった後は本を閉じてほう・・と息を吐きました。
大変読み応えのある、心を打つ作品でした。

しかしこういう本を読むといつも痛感します。
愛する家族と共に平和に毎日を過ごせるということ、
ただもうそれだけで、どれほど幸せなことなのだろうかと。

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本日は、東京都練馬区で出張買取りでした。
築90年(!)の古いお宅だったということです、
中国の古い掛け軸などお譲りいただきました、どうもありがとうございました!


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